青少年「不健全」育成のススメ。

johanne2005-05-23

月蝕歌劇団20周年記念公演「金色夜叉の逆襲」を観てきました。カミさんが「レポマン*1のネタがないよ〜」と呻くので、「美少女と野獣のアングラ劇団! ヲタクの夢を叶えた男!」という企画はどうかと提案し、高取英さんとの交渉がてら。明治期の少年小説家・巌谷小波尾崎紅葉の「金色夜叉」のモデルだというエピソードから怒濤の展開を見せるいつもの高取節ですが、アングラ芝居に疎いカミさんは不必要に戸惑っていました。客席はふしぎちゃん系演劇少女や地下アイドルマニアとおぼしき観客で満員。テント芝居の役者や寺山修司マニアがいかにぼろくそ叩こうとも、「月蝕歌劇団」と「少女革命ウテナ」がアングラテイストを普遍化したのは事実ですから。むしろ、こういうサブカル・チャンプルーみたいな仕掛けをもっとかましていかないと、面白い文化は生まれないんじゃないかと。

タイトルにあるような「不健全」をカウンターに提示するやり方というのも、ある種の「照れ」が混じってしまうと有効なパンチにはならないもので。かといって、いつまでも「内心の自由」を楯に「僕らの居場所」を確保するために抵抗する手法では、持久戦で「青少年健全育成」勢力に負け続けてしまう。この辺がジレンマなのですよ。

今年に入ってからの「青少年健全育成」勢力の動きの活発さは、抵抗を試みる者の気力を萎えさせるのに充分。抵抗しようにも、これだけ手を替え品を替え、各方面から攻撃されると、理性的な戦略、戦術というのが立てにくくなってくる。東京都の有害図書関係では、近頃は東京都より警視庁生活安全課がやたらに張り切っている。関西から始まった「美少女ゲーム規制」のファッショは野田聖子勉強会まで進展してしまうし*2。「9・11以後」の状況下で「治安回復」がマジックワードになって「監視社会」を強化していったのと、「青少年健全育成」がマジックワードとなって「メディア規制、表現規制」に扉を開いたことは、有識者にとっても深刻に認識されているはずだ。しかし現実には、多くの有識者がこの二つのマジックワードを凌駕する言説を構築できていない。僕にしても同様だ。「反・監視社会」までは辛うじて言及しても、エロ表現規制が民衆統制の口火を切る、という課題を積極的に論じている言論人は皆無に近い。「エロ表現を擁護する」のはカブキ者の領域だということか。多くのインテリにとって、エロ表現は未だ「低俗な表現」「差別的表現」で、そこに組することへのフォビアやヘイトが存在するのだとすれば、それこそが前世紀に敗北した革命の轍を踏んでいる事ではないのか?

ぶっちゃけてしまえば、「治安回復」「青少年健全育成」のマジックワードは、「新しい利権」を開拓する勢力にとって非常に都合良く引用されているのだ。野田聖子は「コンテンツ業界」の「自主規制団体」を新設することで、旧郵政官僚や警察官僚の天下り先を造ろうとしている。エロマンガ規制に生活安全課がしゃしゃり出てくるのも、地方自治体で進んでいる「自警団運動」とセットになった「警察利権確保プロジェクト」の一環なのだ。いわゆる「2007年問題」で大量の退職者が生み出されるのは警察とて同様なのだから。

これは僕の妄想だろうか? そう考えるならせいぜい、陰口をたたくがいい。このまま何もしなければ、いずれあなたの自由があなたのものでなくなる世界がやってくると、敢えて警告しておこう。


*1:テックジャイアンエンターブレイン)連載中の「お姉さまの逆襲」(ほしのえみこ)。待望の第3巻は近日刊行予定!

*2:こちらは「ジュベネイル・ガイド」の失態のおかげで中断しているが、その後、着々と失地回復を計っているので油断できない。最近では英字新聞のjapan timesにプロパガンダ記事を掲載させる虚偽と偏見に満ちた情報を与えて提灯記事を掲載させるなど、狡猾な手法で外堀を埋めようとしている。